ようこそゲストさん

Bookstack

迷宮の暗殺者

ミステリ
ASIN:4789721973デイヴィッド・アンブローズ / ヴィレッジブックス

ミステリというと、たいていは「最後にびっくり」だ。最後の一行で読者を驚かせようと工夫を凝らす作家も珍しくない。

ただし世の中には、「真ん中でびっくり」という作品もないわけではない。殊能将之『黒い仏』とか、あるいはエドウィン・コーリイ『日本核武装計画』とか。ちなみに後者はあまりにも意外なので、中盤の、意外な秘密が明かされる一行を読んで「一体これは何のことだ?」と疑問に思ったものだ。前者は30ページも読めばアレの話であることは明白だと思うのだが、周囲からは「分かる訳ねえだろ」と言われ続けているので、不本意ながらここに挙げておく。

『迷宮の暗殺者』もそんな「真ん中でびっくり」の一冊。アメリカ政府の特殊工作員の物語と、夫の死を探る医師の物語が交錯して、すさまじく無茶な展開が訪れる。

まあ、無茶ではある。もっとも冒頭のエピグラフを見れば、変な小説を山ほど読んだ人なら、どんなテーマの話かはあっさり見当がつくだろう。

そのテーマ、ということさえ分かってしまえば、あとはお約束の範疇に収まる物語ではある。それでも、第二部ラスト1行のご無体ぶりはすばらしい。

なんたって主人公が【自主規制】なのだ! 【自主規制】!

キワモノをキワモノとして楽しめる方におすすめしたい。

作者は『幻のハリウッド』のデイヴィッド・アンブローズ。あちらはヒネリの効いた短編集だが、こちらはよじれまくってもう何がなんだか。

2004/02/24(火)

日常

ある雑誌の打ち合わせ。

別の雑誌に書いた記事を見て声をかけてくださったとのことで、たいへんありがたいことである。

それにしても、打ち合わせの席に現れた逆密室5名のうち2名が

ISBN:4896917847

を持っていたとは……

2004/02/22(日)

日常

試験

勤務先が所属する業界団体が、ちょっとした技能認定試験を開催している。そいつを受ける羽目になったので、昼から新宿に出かけた。意気込んで出かけた、ということにしておいてください。

新宿駅近くの証明写真コーナーで写真を用意して、試験会場近くの店で食事しながら受験票に写真を貼りつける。この用意周到ぶりにも、試験にのぞむ熱い気持ちがうかがえるというものだ。なお、写真を切って貼るための鋏と糊は新宿のコンビニで買った(ついでに筆記用具も)。

ちなみに店員の女の子が新入りだったようで、ややこしい注文をしたわけでもないのに後から二度も確認された。慣れていないせいか何かとミスが多く、店長らしき人(たいへん苛立っていた)が何度も女の子を叱って、非常に殺伐とした空間ができあがっていた。ひとが飯食ってる横であまり殺伐とされても困るのだが。なんというか、休日に試験を受けさせられるような重い気分になってしまった。

食事の後はすぐに試験会場へ……は行かず、コーヒーを飲みながら飯嶋和一の新作『黄金旅風』を刊行より一足お先に読んでいた。鎖国へと向かう17世紀の長崎を舞台にした骨太の物語に、しばし試験を忘……ええとその、大きな困難に立ち向かう登場人物たちの意志が、やはり試験という困難に立ち向かう私の熱意と重なって感じられたのだ、ということにしておいてください。

会場に着いた後も試験開始直前まで読み続け、試験の休憩時間もずっと読んでいた。いかに熱意をもって試験に臨んだとはいえ、ものごとには優先順位というものがある。毎年開催される試験と、数年に一度しか出ない飯嶋和一の新作。どちらを重視すべきかは言うまでもない。

その『黄金旅風』はすばらしい小説である。ふだんゲテモノばっかり面白がっている私だが、真摯な物語を受け付けなくなるくらいに感覚が壊れてしまったわけではない。こういう正攻法の傑作に心を揺さぶられるからこそ、わけのわからない怪作や珍作を楽しく読めるのだ。

ふだん私が面白がっているものは、あまり万人におすすめできないもの(というかむやみに人にすすめちゃいけないもの)が多いけど、これは素直にみなさまにおすすめします。傑作。

2004/02/21(土)

日常

東東京ミステリ・リーグ交流会

特別な何かがある、というわけではなく、ご近所(とやや遠方)に住まう人々が集まる宴会である。

昨年末、大森さん宅にて私がどんなふうに眠りこけていたのか、といった自分の過去の欠落を補うことができたのは大きな収穫……ではないが、教えてくださってどうもありがとうございました。

吉野仁さんから、レイモンド・チャンドラーの意外な側面を教えていただく。ううむ、そうでしたか。ミステリという枠に閉じない、一歩引いた視点の大切さを改めて感じた。

電車で帰る方々を駅まで見送って、のんびり歩いて帰る。ふだんは終電を心配したり、あるいは気づいたころには終電がなくなっていたり、ということばかりなので、こんなときはありがたい。