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2006/05/27(土)

日常

[]神の血脈 / 伊藤致雄

第6回小松左京賞受賞作。

ISBN:4758410593

遠い昔、異星人に特殊な能力を与えられた一族がいた。時は幕末。一族の子孫・風之助は、老中・阿部正弘や若き勝海舟、あるいはペリーといった人々に干渉し、幕末の日本を密かに動かしてゆく……。

端整なできばえの時代小説。ただ、その端整さゆえに、伝奇小説としてはこぢんまりとした印象が残る。異星人の力を得た風之助の超人ぶりは鮮やかで、物語も五千年におよぶ広がりを持ってはいるのだから、もっと羽目を外してもよかったのでは。

ほか、ちょっと気になったのは、風之助の言動。幕末の人間なのに妙に現代人らしさが感じられる。そういう人物だからと言ってしまえばそれまでだが、単に現代を先取りするのではなく、幕末とも現代とも異質な精神性のほうが印象深かっただろう。

結末の意外性は巧くできているけれど、強烈な伏線があるとさらに良かったと思う。

……と文句が多いけれど、この端整さゆえに読みやすく、奇異な物語にスムーズに入り込むことができた。

[]神のはらわた / ブリジット・オベール

相変わらずの暴走悪酔いドライヴである。痛そうな格好で犯行に臨む猟奇殺人鬼「缶切りパパ」と、そいつを追うコート・ダジュールの警察の物語だ。

ISBN:4151708103

……が、ブリジット・オベールであるからして、ストレートな警察小説/サイコ・スリラーへと向かうことはまったくない。

捜査を率いるジャノー警部はセクハラおじさん。美女のローラには悪い霊が憑いている(後述)。研修にやってきたローランはMacとFBIのマニア。ジャノーの上司、マルティニ警視はミステリ新人賞の応募原稿を執筆中(まだ1行しか書いていない)。結局いちばん役に立つのは、刑事になることを夢見る一介の巡査、マルセル・ブランだったりする。

この脱力を呼ぶ面々が殺人鬼を追う。残虐さとブラックユーモアと間抜けぶりが同居した独特のドライヴ感は、あなたの脳をよれよれにすることだろう。

たとえば、登場人物が映画を見に行くと……

彼らはハリウッド映画の超大作を見てきたのだ。超巨大なタコの話だ。そのタコの超かわいい子供が超おバカな科学者に誘拐され、巡航客船に乗せられた。それでタコは超憤慨してその客船のあとをつけ、船を沈めて愛する赤ちゃんを取り戻そうとしていた。

……という超クールなことになってしまう。

ちなみに、前作『死の仕立屋』に登場した連続殺人鬼が、地獄に堕ちることもかなわないままローラの脳内に巣喰っている。でも何もできずに悪態をついているだけ。こんなのがシリーズのレギュラー登場人物だったりするのがオベールです。

本書最大の脱力シーンはエピローグ。何やってんだよ!!

2006/05/23(火)

日常

[]ルート350 / 古川日出男

極めて高い効率でデータ圧縮されたような、密度の濃い短編集。

詳細については「ルート350」をご覧ください。

2006/05/22(月)

日常

[]陽気なギャングの日常と襲撃 / 伊坂幸太郎

『陽気なギャングが地球を回す』の続編。詳細は"陽気なギャングの日常と襲撃"をご覧ください。

2006/05/20(土)

日常

[]柳生雨月抄 / 荒山徹

豪快な伝奇小説。詳細については柳生雨月抄をごらんください。