▼ モンスター・ドライヴイン
【ホラー】
ジョー・R・ランズデール / 創元SF文庫
ドライヴイン・シアターでB級ホラー映画を楽しんでいたぼくたち。そこに突然、怪しい光を放つ彗星が飛んできて、ドライヴイン・シアターごと異空間に閉じ込められてしまった! 果たして、ぼくたちはここから生きて出られるのか?
ドライヴイン・シアターでB級ホラー映画を楽しんでいたぼくたち。そこに突然、怪しい光を放つ彗星が飛んできて、ドライヴイン・シアターごと異空間に閉じ込められてしまった! 果たして、ぼくたちはここから生きて出られるのか?
■第一印象
初期のランズデールはスプラッタパンク寄りの作品も書いていた。閉鎖空間でのサバイバルを描いているという本書も、そのひとつかもしれない。最近の作品に見られるようなストレートな骨太さよりも、ひねくれたブラックユーモアが前面に出てきそうだ。■読み終えて
表層の雰囲気はまさに予想通り。閉鎖空間での食と排泄にスポットを当てた物語は、進めば進むほど陰惨な暴力と黒い笑いに覆われてゆく。後半のポップコーン・キングの存在と、彼が放出するポップコーンの描写の気色悪さは秀逸。だが、底に流れているのはいたってまっとうな心情である。
閉じ込められた観客たちは、わずかな食料をめぐって激しく争う。次第に人間性を喪失し、やがてはポップコーン・キングのような「怪物」にひれ伏してしまう。
そんなふうに狂ってゆく群衆の中で、ぎりぎりの試練にさらされながら、なんとか理性を保ちつづけようとする主人公の姿が心に残る。表面的にはまったくタフには見えないのだが、その内なる強さが胸を打つ。マス・ヒステリーのなかで、ひとり冷静さを保つ。それは困難なことだし、時には危険ですらある。
まさかこんな本を読んで目に涙しようとは思わなかった。
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