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チーム・バチスタの栄光

ミステリ
チーム・バチスタの栄光 海堂尊 / 宝島社

第四回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

困難を極める心臓のバチスタ手術。ある大学病院に、そのバチスタ手術を二〇数回にわたって成功させてきた奇跡のチームがあった。だが、立て続けに手術中の死亡が三件起きた。原因は不明。患者の愚痴を聞くのが主な仕事になっている窓際万年講師の田口は、病院長に頼まれて、内部調査を手がけることになる……。

この作品、受賞がすんなり決まったのも無理はない。キャラクターの動かし方が実に巧みなのだ。わずかな言葉とささやかなエピソードだけで、個々のキャラクターをしっかり描いている。

関係者へのインタビューが延々と続く地味な構成の物語でありながら、そこに退屈さはない。会話を通じて関係者それぞれの個性が描き出される過程はたいへん鮮やかで、人物同士の関係までもがくっきりと浮かび上がる。

その描き方も、ミステリとしての謎解きを強く意識している。語り手の医師・田口による関係者インタビューが前半。その後、厚労省からやってきた変人官僚・白鳥が登場し、田口とは正反対のやり方でインタビューを行う。

普段の田口は、患者の愚痴を聞くのが主な仕事。作中でも、聞き手として相手からさまざまな話を引き出している。対して、後半の白鳥はいわゆる「空気を読めない奴」。傍若無人に気まずい発言を繰り返しては場の雰囲気をかき乱し、地雷を踏んで敵を増やす。

そんな対照的な二人によるインタビュー。同じ人物に異なる角度から光を当てることによって、異なる像が映し出される。この人物像の変転が、謎解きにも結びついている。

光を当てる角度を変えることで、まったく違った絵が浮かび上がる。そういう逆転の意外性こそ、ミステリの大きな魅力だろう。で、この作品はそんな「逆転の快楽」をたっぷり使って組み立てられている。

謎を解いた後の事件の解決まで描いているところも好印象。

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