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本の愉しみ、書棚の悩み

読書
ASIN:4794213336 アン・ファディマン / 相原真理子訳 / 草思社

 引っ越しを前に、本の整頓に追われる日々。ふと本屋で見かけたこんな題名の本が気になってしまった。なにしろ「書棚の悩み」である。他人事とは思えない。

 読者としての本とのつきあい方に関する14のエッセイを収めた本である。ちなみに著者は作家で、結婚相手も作家。最初のエッセイでは、ふたりの蔵書を一つにまとめようとしたときのエピソードが語られる。てきとーな夫と緻密な妻が、おのおのの整理法をすり合わせながら蔵書を統合するという難業に立ち向かう、うるわしい物語である。

 本を、読者の人生の断片を形成するものとしてとらえ、書棚をその人の内面がうかがえる場所としてとらえている。明言こそしていないものの、「どんな本を持っているか教えてくれたまえ。君がどんな人物か当ててみせよう」と言わんばかりだ。本を読み、しかも読み終えた本を手元に置きたがる人ならば、共感できるところも多いだろう。

 本を整頓中の身として印象深かったのは、著者が古本屋で買った『本とその収納』という本の話。この本を書いたのはウィリアム・E・グラッドストン、19世紀のイギリスで何度も首相を務めた政治家である。政治と同じくらいに本にも情熱を注いだ人で、
心から本を愛するものは、命ある限り本を家へおさめる作業を人まかせにはしないだろう。
 なんて言葉を遺している。かくしてここでは、グラッドストンが(大英帝国を維持するのと同じようにして)大量の蔵書を管理していた様子が語られる。あいにく、すぐに実行するのは難しいのだが……。ちなみに、可動式の書棚を考案したのはこの人であるらしい。

……そんなわけで非常に楽しく読んだのだけど、どうしよう、また一冊増えちゃったよ。かくして「書棚の悩み」が尽きる日は決してくることがない。

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