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黒焦げ美人

ノワール
ISBN:4163212906 岩井志麻子 / 文藝春秋

 岩井志麻子は安直なジャンル区分になじまないものを書く作家である。「ぼっけえ、きょうてえ」こそホラー小説大賞受賞作だが、その後の作品は、たとえば「ミステリ」などと位置づけてしまうと、その小説の大事な部分がぽろぽろとこぼれ落ちてゆくような気がしてならない。

 おそらくそれは、「岡山」という地方を舞台にしていることに負うのではないだろうか。「岡山」という地方の個性というよりも、「特定の地方にこだわること」の意味が大きいように思える。

 舞台は大正初期の岡山。金持ちの妾になった女の身に降りかかった事件とその顛末を、彼女の妹の視点から語っている。事件そのものはいたって単純。ヒロインを焼き殺した罪で逮捕されるのは誰なのか、章のタイトルを見ているだけで分かってしまう。

 これはヒロインの物語というよりは、遺された人々の物語である。新聞にあれやこれやとプライバシーを書きたてられる遺族たち。ヒロインの家に出入りしていた男たちの人物像の変転。特に、妹の目から見た人物評価の変化が興味深い。

 記者が抱えた奇妙なオブセッションや、犯人の独白に見られる独特の倫理観、あるいは妹が味わう幻滅などの要素を、いわゆるロマン・ノワールとして読むこともできるだろう(曖昧模糊とした区分、というか曖昧であることが重要なファクターとなっている区分だが)。

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