ようこそゲストさん

Bookstack

2002/10/24(木) 第6回みちのく国際ミステリー映画祭

日常
私的な(しかもけっこう愚劣な)行動の記録。

映画祭そのものについて知りたい方は公式サイト(http://www.lantecweb.com/mystery/)をご覧になるのがいいと思います。

※2008/01/03追記:この映画祭、2006年の第10回をもって終了している。現在の公式サイトは http://www.mystery-movie.com/ 。以下の記述で、10/19にたいへんお世話になった三川基好さんは2007年に亡くなってしまった。凶悪な消化器官を誇った杉江松恋氏も、先日会った時はだいぶ自制していたようだ。五年と少しの間に、いろんなことが変わってしまった。

初日(10/18)

 昼前の東京駅で待ち合わせて、杉江松恋さんと学生さん1名と私の計3名で新幹線に。

 仙台で途中下車して、牛タン屋で昼食。杉江さんと私は、牛タン各種+ビールという「昼間からダメな人コース」に邁進する。「ゆでたん(文字通り茹でたもの)」が旨かった。その後、遅れて到着した早川書房の人(ミステリマガジンではM・Kという識別子で出てくるので、ここでもそう表記しよう)と合流して、某巨大古本屋へ向かう。

 学生さんは「何が面白いですか?」と聞いてくるので、古本屋の棚から抜きつついろいろ薦めてみた。すると「読みますー!」とすぐに購入を決意するので、杉江さんともども面白がっていろいろ渡してみた。こういう反応を示してくれる人に本を薦めるのは楽しい。

 70冊近く購入して、学生さんの財布の中身はあっさり吹っ飛んだもよう。常識的に見れば杉江&私がやったことは鬼畜の所業だが、本人は幸せそうだったので、たぶん善行をなしたのだと思う(まあ、自分でもたくさん本を選んでたので、我々だけのせいでもあるまい)。

学生さんが購入した本の一端はこんなところ。
  • マックス・マーロウ『大洪水』
  • ビル・プロンジーニ『骨』
  • マイクル・スレイド『ヘッドハンター』『グール』『カットスロート』
  • フィリップ・ナットマン『ウェットワーク』
  • スキップ&スペクター『けだもの』
  • サイモン・ブレット『死のようにロマンティック』
  • ジャック・オコネル『私書箱9号』
  • ジェローム・チャーリン『パラダイス・マンと女たち』
  • フィリップ・K・ディック『高い城の男』
  • ドナルド・E・ウェストレイク『踊る黄金像』
 なんか無理にここで買わなくてもよさそうな本ばっかり並んでるけど、もうちょっと珍しい本もすすめたはずだ。覚えてないだけで。

 ちなみに私は、マック・ボランが出てくる本や、ミッキー・スピレインが書いた本や、世界の裏側でひそかに進行している陰謀を告発する本などを中心に40冊ほど購入。全部読めば確実にレッドネックでホワイトトラッシュな頭の悪さが身につくことだろう。

 古本屋に長居したせいで、本来乗るはずの電車に間に合わなくなる。これからどうするかはさておき、とりあえず財布に2円しか残ってない学生さんをATMに走らせる。どうも金の動きだけ書いてると私ら明らかに悪人なんですが。

 我々4人は、別の電車でに乗ってすでに盛岡に着いている2人と連絡を取って、その後の行動計画(=どこで落ち合って飲むか)を決める。それにしても、時間どおりに電車に乗ることはロクにできないのに、なぜ飲み食いのセッティングだけはかくもスムーズに処理できるのだろうか。飲食系イディオ・サヴァンなのか。

 盛岡到着からすぐ、M・Kさんと私は駅からタクシー飛ばしてホールに向かい、舞台劇『デストラップ』を観る。観客席の中央には高橋克彦さんの姿が。会場が狭い割に出演者のみなさんがやたらと大声なので軽く頭がくらくら。あ、でも劇そのものは楽しめました。作者アイラ・レヴィン、というほかは、内容などもまったく予備知識のない状態で観たので。

 その後、全員(合計7人)合流して焼肉屋へ。冗談のように肉を食う。で、杉江松恋命令(酔った氏に逆らうことを蛮勇という)で、盛岡に来てない逆密室メンバーに焼肉+冷麺自慢のメールを送る。これは主に霜月蒼さんを悔しがらせる目的。しかしまもなく「いま満腹だから悔しくないよ」との返信が届き、こちらが悔しがることに。完敗である。

 その後もなんだかんだあって、結局寝たのは午前5時。

二日目(10/19)

 11時すぎにホテルのロビーに降りて行くと、前日に比べて妙に頭がさっぱりした風情の杉江松恋氏に遭遇。どうしたのかときいてみれば「早起きしてサウナに行って、ついでに散髪もしますた」だそうな。異様な素早さである。

 ローレンス・ブロック解題原稿について、こっちに来てないメンバー向けに伝達事項など送信。

 お昼は、一同、ジム・トンプスンなどの翻訳で知られる三川基好さんと待ち合わせて、三川さん行きつけの寿司屋に行く。牡蠣が美味しかったことである。ビールも飲んだことはいうまでもない。この後の、軽く酔いがまわった状態でのやりとりから、人間の身体にはビール穴というものがあることを発見する。

 三川さんにお礼を述べてお別れし、その後は逢坂剛さん&大沢在昌さんトークショー。途中で北方謙三さんも参入し、話はいつのまにか「今後の映画祭やトークショーのあり方」をめぐるメタ・トークショーに。この映画祭も、企画の質を上げていかないと、といった話になる。

 確かに今年の映画のラインナップには心惹かれるものが少なく、結局映画を一本も見ていない。せっかくこういうところに来ておきながらもったいないことである。北方さんのおっしゃるように「凝った企画の質」で客を呼ぶようにしないと大変かも。

 トークショー会場を後にしてしばし市内をうろうろ。

 杉江松恋さんは「泳ぎに行きたいざんす」と書店のタウンガイドでプールを探す。なんか水着まで持ってきてるし。10月の盛岡に水着を持ってくる男。

 私はといえば、M・Kさんが編集したという新刊『王宮劇場の惨劇』を購入し、ついでに棚で見つけたソウヤーの新刊『イリーガル・エイリアン』も購入。ファーストコンタクトSFと法廷ミステリを合体させるという、ソウヤーならではのご無体ぶりが光る。ちなみに『王宮劇場の惨劇』は
フランス革命前夜が舞台の時代ミステリ。M・Kさんによれば新潮社からも『天球の調べ』という時代ミステリがまもなく刊行されるそうで、背景が思い切りかぶってしまうらしい。つまり「いざ勝負!」ということですね。

 その後郊外の温泉へ。松恋タンはひとりプールへ。

 湯上がり+マッサージ機+ビールという快楽三連発を満喫。それにしても、マッサージ機に快楽を覚える20代というのもいかがなものか。

 ふとメールを確認すると、こっちに来てない執筆者の一人が、昼前に伝えたブロック解題の伝達事項をすでに反映していた。すばらしい。なんだかとても有意義な時間の使い方をしたような気分になる。私は何もしていないんだけど。

 今度は昼食の寿司の話を書き連ねて、ふたたび霜月蒼攻撃メール。これで、ついに悔しがらせることに成功する。

 夜は昼間に行った寿司屋の姉妹店へ。鍋をいただく。

 その後はまたまた三川さん行きつけというバーへ。三川さんもいらっしゃっていて、ジム・トンプスンやエリオット・パティスンやレナード・チャンの話などなど、楽しい時を過ごす。私はギネスを頼んだところ、キャンペーンのくじ引きとかでギネスのタオルが二枚当たりました。

 さらにもう一軒。映画祭スタッフの皆さんが臨時設営したバーで、関係者の方々も姿を見せるところである。杉江松恋さん(凶暴な腕力と非常識な消化器官を誇る30代)は北方謙三さん(確か50代では……)と腕相撲をして敗れ、翌日も腕が痛いとうめいていた。北方さんが敗れたのは他の人が二人がかりで挑んだときだけのようである。北方謙三最強。

 とどめにもう一軒回って、午前4時就寝。

最終日(10/20)

最終日は11時から焼肉屋で肉や冷麺を食べつつビールを飲む。

盛岡駅でおみやげを買う。杉江松恋氏は駅前の古本市に突撃し、トム・デミジョン(トマス・ディッシュ&ジョン・スラデックの合作)の『黒いアリス』を購入。でも「持ってないならやる」とおっしゃるのでありがたくいただく。感謝。ちなみに盛岡駅地下の書店ではトマス・ブロック『超音速漂流』が平積みになっていた。なぜ今?

新幹線で帰る。車中ではぐっすり眠る。

で、家に帰るとちょうど一昨日仙台から発送した古本の宅急便が届いていた。

ほかに『天球の調べ』のゲラも。おお、何だかえらく力がこもっているようだぞM・Kよ。

名前:  非公開コメント   

  • TB-URL  http://bookstack.jp/adiary.cgi/01425/tb/

黒焦げ美人

ノワール
ISBN:4163212906 岩井志麻子 / 文藝春秋

 岩井志麻子は安直なジャンル区分になじまないものを書く作家である。「ぼっけえ、きょうてえ」こそホラー小説大賞受賞作だが、その後の作品は、たとえば「ミステリ」などと位置づけてしまうと、その小説の大事な部分がぽろぽろとこぼれ落ちてゆくような気がしてならない。

 おそらくそれは、「岡山」という地方を舞台にしていることに負うのではないだろうか。「岡山」という地方の個性というよりも、「特定の地方にこだわること」の意味が大きいように思える。

 舞台は大正初期の岡山。金持ちの妾になった女の身に降りかかった事件とその顛末を、彼女の妹の視点から語っている。事件そのものはいたって単純。ヒロインを焼き殺した罪で逮捕されるのは誰なのか、章のタイトルを見ているだけで分かってしまう。

 これはヒロインの物語というよりは、遺された人々の物語である。新聞にあれやこれやとプライバシーを書きたてられる遺族たち。ヒロインの家に出入りしていた男たちの人物像の変転。特に、妹の目から見た人物評価の変化が興味深い。

 記者が抱えた奇妙なオブセッションや、犯人の独白に見られる独特の倫理観、あるいは妹が味わう幻滅などの要素を、いわゆるロマン・ノワールとして読むこともできるだろう(曖昧模糊とした区分、というか曖昧であることが重要なファクターとなっている区分だが)。

名前:  非公開コメント   

  • TB-URL  http://bookstack.jp/adiary.cgi/01424/tb/

2002/10/24(木) ビール穴

日常
人間の身体にはビール穴というものがある。特にビールを好んで飲む人間の身体には、たくさんのビール穴がある。

ビール穴のはたらきは、概ね脳細胞と同じである。ただしビール穴は、ビールで満たされているときだけ活動する。

人間が飲んだビールは、ビール穴に溜まる。ビールが溜まった穴は活性化し、脳の一部としての活動を開始する。ビールが抜けてしまうと、ビール穴は活動を停止する。

酒飲みの次のような行動は、ビール穴が原因と考えられる。
  • 素面のときよりも弁舌がなめらかになる(一時的な言語能力の向上)
  • 素面だとたどり着けない居酒屋。他の店で飲んだ後なら、簡単にたどりつける(一時的な空間認識力の向上)
  • 昨夜、たっぷり飲んだ後の記憶がない(一時的な記憶力の向上)
  • 飲みすぎてどこかの看板を壊してしまった(脳が身体のポテンシャルを引き出す力の一時的な向上)
  • 酔っ払って、大型免許も持ってないのにそのへんの工事現場にあったダンプカーを動かしてしまった(一時的な理解力の向上)
発見されて日が浅いため、正確なメカニズムの解明については今後の研究が待たれる。

名前:  非公開コメント   

  • TB-URL  http://bookstack.jp/adiary.cgi/01423/tb/

2002/10/24(木)

日常

ミステリマガジンの新刊書評の分担を知らされる。

 この書評コーナー、レギュラーの執筆者は5人で、私は刊行点数が多いときのピンチヒッターという位置にいる(でも、結局3回に2回くらいは動員されているような気がする)。が、今回は刊行点数がやたらと多いらしく、私のほかにあと二人、合計8人という体制で望むもよう。

 私の担当はこれ。

  • 「影」の爆撃機』デイル・ブラウン
  • 『危険な匂いのする男』テリー・ケイ
  • 『髑髏島の惨劇』マイクル・スレイド
  • 『箱の中のユダヤ人』トマス・モラン

 『髑髏島』は私が強く希望したもの。『箱の中のユダヤ人』も、あらすじだけ読んで心をそそられた。


名前:  非公開コメント   

  • TB-URL  http://bookstack.jp/adiary.cgi/01038/tb/