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▼ 2006/06/01(木)
■[入手本][読書中]文章探偵 / 草上仁
左創作は、小説講座の講師を務める中堅ミステリ作家。講座の場では、文章からその作者の性別や年齢、職業などを突き止める芸当を披露する……と、文章をプロファイルする探偵が登場する本格ミステリらしい。
冒頭から、さっそく文章プロファイルの様子が紹介される。シャーロック・ホームズが依頼人のことをあれこれ言い当てるような感じですね。
■[読書中]ベータ2のバラッド / 若島正・編
ベータ2のバラッド / サミュエル・R・ディレイニー
銀河人類学を学ぶジョナニーは、失われた星間移民船について調査することになった。船に伝わる歌には、その秘密が隠されていた……
ディレイニーにしては極めてシンプルな話で、筋運びも直線的。謎解きの要素も、過去の記録を掘り返すことで片づいてしまう。厚みのもたらす華麗さには欠けるものの、「物語を伝えること」に対するストレートな喜びが漂うところに魅力を感じた。
四色問題 / バリントン・J・ベイリー
バロウズ風味(ウィリアムのほう)の実験小説。最初から飛ばしてます。
一九九〇年に着手された地図作製用の衛星測量で、地球にはそれまで探検家や地図作成者が見逃してきた未発見の地表面がかなりあることがあきらかになった。
もっと前に気づかないのか……。
どんな地図でも、隣り合った領域の色が重ならないように塗り分けるには四色あればよい──という、当時未解決だった数学上の難問をネタに展開する。なんだかサンリオSF文庫の裏表紙を読んでるような感じ。
降誕祭前夜 / キース・ロバーツ
ナチズムが支配する英国を舞台に描く、重厚なサスペンス。『SS-GB』とか『英国占領』などと同じ系統の作品だ。それらより遙かに短いものの、「ナチズムのある日常」がじっくりと描かれている(ドイツ語の多用に頼っているところもあるけれど)。
伝統的な小説としての読み応えは、今のところこの作品がベスト。もっとも、そういう観点で前の2編と比べることにあまり意味があるとは思えない。
▼ 2006/05/30(火)
■[読書中]元気なぼくらの元気なおもちゃ / ウィル・セルフ
飲みに行ったり他の本を読んだりであまり進まず。
元気なぼくらの元気なおもちゃ
表題作。車で移動中の精神分析医と、彼が拾ったヒッチハイカーのお話。奇想コレクションという枠組みとは裏腹にへんてこな要素はほぼ皆無で、物悲しさ漂う物語だ。
ボルボ七六〇ターボの設計上の欠陥について
主人公は表題作と同じ人物で、表題作の数年前のできごとを物語る。さきほどとは正反対のコミカルな物語だが、表題作と続けて読むとあまり無邪気に笑うことはできない。
▼ 2006/05/29(月)
■[読書中]元気なぼくらの元気なおもちゃ / ウィル・セルフ
ちょっと「手強い」感じの短編集である。読み終えたときに感じるわけのわからなさとか。
全8編中5編を読み終えたところ(ページ数では半分くらい)。以下、読み終えた短編の印象だけ簡単に。
リッツ・ホテルよりでっかいクラック
本当に題名どおりの話である。なんだこりゃ。
虫の園
牧野修とか田中啓文とか小林泰三が書きそうな方向に邁進することもできたのだろうけど、その一歩手前で踏みとどまったお話。
ヨーロッパに捧げる物語
ヨーロッパ統合にまつわる軽妙なホラ話。オチはあからさまに見えている。
やっぱりデイヴ
至る所でデイヴに遭遇する男の物語。パラノイアックな陰謀史観臭にウィルソン・ブライアン・キイの妄想を思い出した。
愛情と共感
「内なる子供」が実体を備えて、大人と一緒に暮らしている……という社会。そんな妙な設定をひねり出したのも、このオチをやりたかったからなのか? 傾向は全く異なるけれど、この唐突なひっくり返し方に[4336039607:ウラジーミル・ソローキン]を連想した。