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お下劣ポリ公大暴走!

フィルス アーヴィン・ウェルシュ / アーティストハウス

 お下劣ポリ公の薄ぎたねえ日常。これが「トレインスポッティング」などで知られるアーヴィン・ウェルシュの最新長編っつうわけだ。

 主人公はブルース・ロバートソンってワルい刑事。女も黒人も差別するし、同僚だって平気で陥れちまうろくでなしさ。「人生はゲーム。勝者はただ一人。それはおれ」ってのが奴のモットーだ。腹の中には妙に思索的なサナダムシを飼ってんだけど、自分じゃまだそのことに気づいちゃいない。

 いちおう殺しを捜査すんだけど、なにしろこんな奴が真面目にやるわけねーよな。まして被害者は黒人だ。捜査はそこそこ、休暇はきっちり。アムステルダムでエロたっぷりのバカンスを満喫さ。とーぜんだね。

 補導した娘にイイことさせたり、なにかと非道な毎日を語る鬼畜刑事。なぜか合間に、別れた奥さんのものとおぼしき独白が挟まれているんだ。独白といやあ、ブルースの腹の中にいるサナダムシもいろいろ喋るんだよな、ひとりぼっちのくせして。でまあ、いつしか鬼畜刑事の毎日も平凡なものじゃなくなってゆくわけだ。クライマックスじゃ、腰抜かすこと間違いなしだね。

 世界そのものがひっくり返っちまう気持ちよさ。これって、ミステリのでっかい魅力のひとつだろ? ウェルシュの野郎は、クソみてえな文体でごていねいな伏線をくるんで、思いっきり世界をひっくり返してみせるわけだ。こいつはすげえぜ。

 そーいう意味じゃ、こんだけピュアなミステリもそうそうないね。

 おれとしちゃ、今ちょっと後悔しているんだ。こんなこと書いたりしなきゃ、いきなり本を読んだ奴もそんだけよけいにビックリできたからな。

 世間じゃウェルシュの野郎をミステリ作家だなんて思っちゃいねーけど、こいつは去年1年間に読んだどんなミステリよりも強烈におれのキンタマを蹴飛ばした本さ。……おっと、もちろんねーちゃんが読んだってビックリだぜ。どこを蹴飛ばされるのかわかんねーけどな。

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