▼ 朗読者
【小説】
ベルンハルト・シュリンク / 松永美穂訳 / 新潮社(→新潮文庫)
ドイツ人作家の、本国ほか世界各国でベストセラーになっているという作品*1。
少年は年上の女と知り合い、やがて恋に落ちる。秘められた逢い引きの日々。女は少年に古典を朗読させ、それを聞くのを好んでいた。奇矯なところのある女は、ある日なんの前触れもなく少年の前から姿を消した。数年が過ぎ、青年となった彼は、思いもかけないところで女と再会する……。
第一部に張りめぐらされた伏線がみごとに活かされて、それまでのエピソードの意味合いすら変えてしまう、第二部後半(全体の3分の2くらいが過ぎたところ)でのあの瞬間。それは、優れたミステリのもたらす驚きに匹敵する(そういえば作者のデビュー作はミステリだとか*2)。
物語のすべてが「あの事実」へと収斂する第三部。それを形を変えた第一部の再演として見ると、物語の全体がある種の幾何学模様のように精緻に組み立てられていることがわかる。
さほど長くない上に、登場人物も極端に少ないというストイックなつくりだが、実のところきわめて豊穣な物語が埋め込まれた小説。ストイックと言えば、安易な作家なら後半を「泣かせる」方向へと盛り上げそうだが、そこをあえて淡々と描いている。この点にはかなり好感が持てるので、「アメリカで映画化されるかも」と知ってちょっと不安になった。
ドイツ人作家の、本国ほか世界各国でベストセラーになっているという作品*1。
少年は年上の女と知り合い、やがて恋に落ちる。秘められた逢い引きの日々。女は少年に古典を朗読させ、それを聞くのを好んでいた。奇矯なところのある女は、ある日なんの前触れもなく少年の前から姿を消した。数年が過ぎ、青年となった彼は、思いもかけないところで女と再会する……。
第一部に張りめぐらされた伏線がみごとに活かされて、それまでのエピソードの意味合いすら変えてしまう、第二部後半(全体の3分の2くらいが過ぎたところ)でのあの瞬間。それは、優れたミステリのもたらす驚きに匹敵する(そういえば作者のデビュー作はミステリだとか*2)。
物語のすべてが「あの事実」へと収斂する第三部。それを形を変えた第一部の再演として見ると、物語の全体がある種の幾何学模様のように精緻に組み立てられていることがわかる。
さほど長くない上に、登場人物も極端に少ないというストイックなつくりだが、実のところきわめて豊穣な物語が埋め込まれた小説。ストイックと言えば、安易な作家なら後半を「泣かせる」方向へと盛り上げそうだが、そこをあえて淡々と描いている。この点にはかなり好感が持てるので、「アメリカで映画化されるかも」と知ってちょっと不安になった。
- TB-URL http://bookstack.jp/adiary.cgi/01570/tb/