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金星のZ旗

SF
吉岡平 / ソノラマ文庫

 『火星の土方歳三』が面白かったので、同趣向の第二弾にあたるこちらにも手を出してみた。日露戦争時の日本海軍の参謀・秋山真之が金星(もちろんバローズの描いた金星だ)に行き、大平原を駆ける陸上艦隊を率いて戦う。

 作者はバローズの金星シリーズに強い思い入れがあるそうで(陸上戦艦が出てくるからだ)、『火星~』よりも先にこちらを書きたかったらしい。

 ……が、できばえは『火星~』には遠く及ばない。

 主人公の設定がその一因だろう。新撰組副長ならばともかく、秋山真之は日本海軍参謀というデスクワークの人なので、こういう冒険活劇にはあまり向いていない。クライマックスの陸上艦隊戦が数少ない見せ場だけれど、あとがきで明かされる作者の思い入れのわりには描写も分量も控えめだ。

 ほかには、現実に密着しすぎたひねりのない風刺(アリコ国とパンジャ国なんてのが出てくる。パンジャ国の指導者の描写は露骨に小泉純一郎をなぞっている)、「火星」に比べ乏しいディテールの描写など。ちなみにこれは、バローズの原典にも見られる欠点である。あとがきを読むかぎりでは、作者もそれに気づいていたのではないか。

 作者は本当に金星シリーズが好きなのだろう。原典のまずい部分まで忠実に再現してしまう。これは偽りのない愛だ。惚れてしまえばあばたもえくぼ。ダメなところもいとおしい。ただし残念なことに、読者がその愛を共有できるとは限らない……。

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このミステリーがすごい!2005年版

読書
ASIN:4796644067 宝島社

ざっとアンケート回答を眺めたところ。(2004/12/07現在)

ちなみに私が選んだのはこんな作品。


国内
1.『裸者と裸者』打海文三
2.『Q&A』恩田陸
3.『紅楼夢の殺人』芦辺拓
4.『サウダージ』垣根涼介
5.『天才パイレーツ』戸梶圭太
6.『モンスターズ1970』井上雅彦・菊地秀行・田中啓文・友成純一

海外
1.『マンハッタン狩猟クラブ』 ジョン・ソール
2.『地獄の世紀』サイモン・クラーク
3.『奇術師』クリストファー・プリースト
4.『形見函と王妃の時計』アレン・カーズワイル
5.『荊の城』サラ・ウォーターズ
6.『迷宮の暗殺者』デイヴィッド・アンブローズ

『地獄の世紀』を挙げた人が、私のほかには集計外の内藤陳さんだけ、というのがちと寂しい。

学生のころ、所属していた大学サークル枠で海外作品のベスト6を選んだことがある。ちょうどマイケル・スレイドの『グール』が出た年で、私は嬉々としてこいつを上位にぶち込んだ。しかし悲しいことに、その年の「このミス」で、他に『グール』を選んだ人は誰もいなかった。唯一『グール』に言及していたのはバカミスのページだけ。

10年以上前のあの寂しさを、また思い出してしまった。冬の夜は長く寒い……

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2004/12/07(火)

日常

家に届いていた「このミステリーがすごい!2005年版」をパラパラと眺める。


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