▼ 彼岸の奴隷
【ノワール】
小川勝己 / 角川書店 (→角川文庫)
セックス、バイオレンス&カニバリズム。これはそういう作品だ。
登場人物のほとんどが、どこか壊れてブレーキが効かなくなっている。まっとうなキャラクターと思えた刑事が実はかなりの食わせ者で、暴力衝動の塊みたいな悪徳刑事が意外とまっとうな思考回路を持っていたりするのは序の口だ(とはいえ、やっぱりまっとうな人間ではない)。内面も含めて、題名どおり彼岸の世界に行ってしまった人間が登場人物の大半を占めている。
いきなり強烈な印象を残すのは、暴力団幹部の八木澤。嬉々として残虐行為に精を出し、言うとおりにならなかった女の手足を切り落としてその肉を食べるにいたっては、まさしく彼岸の人である。……ただし、もっと歪んだ印象を残す登場人物は他にもいる。激烈な異常行為を表に出さないだけのこと。
帯には、馳星周の「すべてが歪んだ物語の先に見えるものは--もちろん現実だ」という言葉が踊っている。でも、前述の八木澤をはじめ、極端にカリカチュアライズされた人々が入り乱れる物語のどこがリアルなのか?
それは、おそらく作者が妙な自制をしていないところにあるのだと思う。タブーを踏み越えてでも、書こうとしたことを書いている。そのスタンスは、ジャンルこそ異なるけれど、スプラッタパンクに通じるものがある。
セックス、バイオレンス&カニバリズム。これはそういう作品だ。
登場人物のほとんどが、どこか壊れてブレーキが効かなくなっている。まっとうなキャラクターと思えた刑事が実はかなりの食わせ者で、暴力衝動の塊みたいな悪徳刑事が意外とまっとうな思考回路を持っていたりするのは序の口だ(とはいえ、やっぱりまっとうな人間ではない)。内面も含めて、題名どおり彼岸の世界に行ってしまった人間が登場人物の大半を占めている。
いきなり強烈な印象を残すのは、暴力団幹部の八木澤。嬉々として残虐行為に精を出し、言うとおりにならなかった女の手足を切り落としてその肉を食べるにいたっては、まさしく彼岸の人である。……ただし、もっと歪んだ印象を残す登場人物は他にもいる。激烈な異常行為を表に出さないだけのこと。
帯には、馳星周の「すべてが歪んだ物語の先に見えるものは--もちろん現実だ」という言葉が踊っている。でも、前述の八木澤をはじめ、極端にカリカチュアライズされた人々が入り乱れる物語のどこがリアルなのか?
それは、おそらく作者が妙な自制をしていないところにあるのだと思う。タブーを踏み越えてでも、書こうとしたことを書いている。そのスタンスは、ジャンルこそ異なるけれど、スプラッタパンクに通じるものがある。
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