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馬鹿★テキサス

ミステリ
ASIN:415174701Xベン・レーダー / ハヤカワ・ミステリ文庫

馬も四本足、鹿も四本足。そしてこの本に出てくる最高の馬鹿も四本足。正確には二本足の馬鹿が二人。

舞台はテキサスの田舎。冒頭、馬鹿コンビが鹿を撃つ。ところが獲物を検分してみると鹿じゃなかった。鹿の着ぐるみを着て鹿の観察をしていた動物学者だったのだ。これが事件の幕開け。最初から馬鹿エンジン全開だ。

いい奴と悪い奴、そして馬鹿な奴が出てくる。いい奴が悪い奴の犯罪を暴くという内容だが、物語を前に進めるのは馬鹿な奴らだ。馬鹿な奴らがやらなくていいことをやったり、やるべきことをやらなかったりして、いろんな物事が狂ってゆく。

もちろん、これは悪い奴が懲らしめられる話だ。だから、無事に一件落着する方向に収束してゆく。おさまりのつかないまま暴走してゆくのも面白いけど、そうなると人には薦めにくい。でも、これなら安心だ。

落ち着くべきところに落ち着くとはいえ、収束のしかたはずいぶんマヌケだ。なにしろ悪い奴らは、馬鹿な奴らのせいで実にマヌケな仕打ちを受けるのだから。

原題は"Buck Fever"。邦題は「馬鹿フィーバー」でもよかったのに……と思ったけど、早川書房の中の人があんまりだと思ったのだろう。ふざけた本を出版してるけど、きっと根はまじめな人たちに違いない。

残念ながら馬は登場しない。これは鹿ミステリなのだ。アメリカの作家に、漢語の字面にまで配慮を求めるのは無理というものだ。

馬鹿ミステリを所望の方はディック・フランシスあたりを併読するといいだろう。

追記:早川書房の中の人によると、この邦題は『パリ、テキサス』を意識したらしい。馬鹿はパリだったのか……

2008/01/03追記:そういえば同じ早川書房の『CLAW 爪』の帯には「猛虎襲来」と書いてあったけど、あれはもしかして「蒙古襲来」をイメージしたのだろうか。何となく同じ思考回路の産物のような気がする。

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