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マンハッタン市街戦

冒険小説
スティーヴン・マーティン・コーエン / 創元ノヴェルズ

 1991年、湾岸戦争が勃発したころのニューヨーク。この街に潜入していた3人のイラク人工作員が活動を開始した。人々が集まる場所に次々と爆弾が仕掛けられ、街は戦場と化す。

 彼らを狩り立てるのは──休職中だった敏腕刑事に、粗暴な爆発物専門家、そして謎の多いFBI捜査官。バグダッドの戦争に並行して繰り広げられる、ニューヨークでの戦争の行方はいかに?

 1997年の作品。都市を狙ったテロ、という素材のあまりにお気楽な扱い方に、9.11以前ならではの大らかさを感じる。もちろんアラブの大義だのアメリカの正義だのはどうでもよくて(なにしろ作者はこの作品をガイ・フォークスに捧げているのだ)、爆弾を仕掛ける3人と、それを追う3人との対決をアクション映画風に描いている。

 題材の扱いかたがお気楽に見えてしまうのは、緊迫したアクションの合間にバカバカしい(あるいは品のない)ギャグを挿まずにいられないという、作者の因果な性癖によるものだろう。

 特にカーチェイスの場面は爆笑モノ。行く手をさえぎるのは、愛と平和を説くハレ・クリシュナの信者の一団だったりするのだ。追う側も追われる側も、ハレ・クリシュナの皆さんを平気で巻き添えにして銃撃戦を始めてしまう。

 そういえば、作中に登場する映像解析システムは、ハーポとチコとグルーチョという名前の3台のコンピュータで構成されているのだ。根っからのギャグ好きであろう。

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