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ギャングスタードライブ

犯罪小説
ギャングスタードライブ 戸梶圭太 / 幻冬舎(→幻冬舎文庫

 ダンサーくずれの女・敏子に、母の旧友・麗子が持ち込んだ依頼。それは、麗子の別れた夫のもとで暮らしている彼女の娘・理沙を誘拐することだった。押し切られるようにして依頼を請け負った敏子は、幼な馴染みでヒモ暮らしの男を相棒に、誘拐計画に臨む。しかし、彼女の別れた夫・小笠原は、暴力団の組長なのだ……。

 誘拐犯と暴力団のカーチェイス。随所にはさまれたヒネリのきいた展開。描かれる家庭像は現代的ではあるが、でもそれを深刻な面持ちで語るようなことは決してしない。どこかヘンなキャラクター同士の絡み合い(誘拐される少女と大薮春彦マニアのやくざは強烈な印象を残す)に、最後の最後まで先の読めない展開、そして変に湿っぽくならない筋運びには好感が持てる。「和製タランティーノ」というたたき文句もなかなか的を射ているのではないだろうか。私はエルモア・レナードをふと思い浮かべた。

 それはさておき、こういう小説でのストーリーのひねりは、謎解きミステリの解決部分に相当すると思う。序盤のシチュエーションからどんどん思わぬ方向に転がってゆく物語を楽しむためには、転がる方向を知らないでおくに越したことはない。

 だから、この本の帯には問題がある*1。中盤以降の展開をいろいろと書いているので、物語が思わぬ方向に転がってゆくという楽しさが減ってしまうのだ。人物紹介に徹するのならまだしも、内容に無闇に言及するべきではないだろう。

 『永遠の仔』を読んだときにも思ったのだが、幻冬舎はミステリの装丁に関する配慮がかなり欠けているような気がする。今後幻冬舎のミステリを手にとるときは、帯や表紙にはあまり目を通さないようにしなければ。

 もちろん、作品自体は非常に楽しく読むことができた。できれば、ハードカバーよりは文庫本で読みたい一冊。

*1 : 2008/01追記:ちなみにこれは単行本のときの話。文庫がどうだったかは知らない。


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