▼ ファイト・クラブ
【小説】
■喧嘩上等暴力炸裂
チャック・パラニューク / 池田真紀子訳 / 早川書房冒頭の場面は、数分後に爆発する超高層ビルの屋上。主人公は口に銃口をつっこまれている。そんな状態の彼が語るのは……ファイト・クラブという喧嘩上等な男たちの秘密クラブに端を発する、奇想天外な物語。
鋭い文体(翻訳だが、きわめて個性的だ)で描く、アナーキーな暴力と、破壊衝動の果てしないエスカレート。随所に散りばめられた、ブラックユーモアに満ちたエピソードの数々。
暴力的。
政治的。
お下劣。
そして痛切な叫び。
とりとめもなくエピソードが連ねてあるだけの、破綻気味の小説のような印象を受けるが、決してそんなことはない。むしろ、きわめて緻密に構成された作品だ。ミステリでは使い古されたある手法を、実に効果的に用いている。
……おっと、内容について詳しく伸べるのはやめておく。なにしろファイト・クラブの規則は、
「第一条 ファイト・クラブについて口にしてはならない」
「第二条 ファイト・クラブについて口にしてはならない」
なのだから。
ダークな笑いに満ちたポップなノワール----例えば『ポップコーン』のような----が好きな方には是非おすすめの一冊。1999年の翻訳小説ベスト3に入ると思う。
P.S.
この小説、デビッド・フィンチャー/ブラッド・ピットの監督/主演コンビで映画化された。私は見ていないのだが、ある意味では映像化不可能なこの小説を、いったいどんなふうに映画にしたのだろう?
(と書いたのを見た知人が教えてくれた。おそろしいことに、けっこう原作に忠実だったようだ。映像化によってある側面はさらに強化された模様)