▼ 男は嘘つき、女は……
【小説】
ウォーレン・アドラー / 角川文庫
ケンは作家志望のコピーライター、妻のマギーはコンサルタント。二人は、レストランでマギーのクライアントのエリオット、そして妻のキャロルとディナーをともにする。初対面のはずのキャロルをひと目見て、ケンは衝撃を受ける。20年前、深く愛しあいながらも別れざるをえなかったキャロルに生き写しなのだ。だが、彼女は年齢も経歴もあのキャロルとは異なるうえ、ケンを知っている素振りは見せなかった……。
……という印象的な出だしとともに幕を開ける、二組の男女の物語。登場人物を必要最少限に絞り込んで、彼らの駆け引きをじっくりと描いている。引き返せないポイントを次々と越えてゆく(あくまでも、追い詰められるわけではない)につれて、物語の空気は徐々にサスペンスを増す。
激しい愛、というものを描く小説だが、決して単純なラブ・ロマンスではない。ポイントは、彼らがそれなりに年を取っている、というところ。「愛のためなら何もかも捨ててでも」なんてきれいごとは言っていられないし(例えば、彼らの資産に関する意識に注目)、年齢から来るあせりもないわけではない。だからこそ生まれる企み。激情に駆られるだけでなく、現実もしっかり見据えているがゆえの微妙な駆け引きがスリリングだ。
読んだ直後には、その唐突さにやや戸惑ったラストシーンも、物語に深みを与える上では成功していると思う。しかし、ハリウッドで映画化されるとしたら、このラストは改変されそうだな(そういう性質の終わり方なのだ)。
ケンは作家志望のコピーライター、妻のマギーはコンサルタント。二人は、レストランでマギーのクライアントのエリオット、そして妻のキャロルとディナーをともにする。初対面のはずのキャロルをひと目見て、ケンは衝撃を受ける。20年前、深く愛しあいながらも別れざるをえなかったキャロルに生き写しなのだ。だが、彼女は年齢も経歴もあのキャロルとは異なるうえ、ケンを知っている素振りは見せなかった……。
……という印象的な出だしとともに幕を開ける、二組の男女の物語。登場人物を必要最少限に絞り込んで、彼らの駆け引きをじっくりと描いている。引き返せないポイントを次々と越えてゆく(あくまでも、追い詰められるわけではない)につれて、物語の空気は徐々にサスペンスを増す。
激しい愛、というものを描く小説だが、決して単純なラブ・ロマンスではない。ポイントは、彼らがそれなりに年を取っている、というところ。「愛のためなら何もかも捨ててでも」なんてきれいごとは言っていられないし(例えば、彼らの資産に関する意識に注目)、年齢から来るあせりもないわけではない。だからこそ生まれる企み。激情に駆られるだけでなく、現実もしっかり見据えているがゆえの微妙な駆け引きがスリリングだ。
読んだ直後には、その唐突さにやや戸惑ったラストシーンも、物語に深みを与える上では成功していると思う。しかし、ハリウッドで映画化されるとしたら、このラストは改変されそうだな(そういう性質の終わり方なのだ)。
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