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▼ 2005/12/22(木) 狼の帝国
■[ミステリ]狼の帝国 / ジャン・クリストフ・グランジェ
さっき読み終えた。たいへん興奮している。
ついこの間まで「今年のベスト」を選んでいたわけだが、これは来年のベスト有力候補だと断言してしまうくらいに興奮している。
『クリムゾン・リバー』の机の並べ方に随喜の涙を流した人、『コウノトリの道』は面白いけどまともすぎやしないかと思った人には、心の底からお薦めしたい(どっちも自分のことだ)。
彼は自分がスポンサーよりも抜け目がないと思い込んでいた。操られるのではなく、操ることができると思い込んでいたのだ。(p.303)
そうなっていたかもしれない。二〇〇一年九月十一日のことがなければ。(p.316)
……という文章からもうかがえるように、マクロなスケールの妄想と、個人レベルの不安感とが綺麗に重なり合う、きわめて水準の高い陰謀小説である。
このへんもあわせて読むといいだろう。
- フィリップ・K・ディック作品
- 迷宮の暗殺者 / デイヴィッド・アンブローズ ISBN:4789721973
- 陰謀と幻想の大アジア / 海野弘 ISBN:4582427146
特に『陰謀と幻想の~』を先に読んでおくと、例えば次のような一節に激しく興奮できる。
〈灰色の狼〉はその失われた大陸を夢見ているのです。(p.443)
すごいよこれは。どうしましょうか。
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- ▼ 読書記録-[Jan 03,2006] Megurigami Nikki
▼ 2005/12/18(日) DVDなど見て過ごす
■チーム・アメリカ
某氏から「ぜひ見た方がいい」「というか、どうしてまだ見てないんですか!」と叱責されるような勢いで薦められた。
ルーブル美術館やピラミッドを吹き飛ばしながらテロと戦うチーム・アメリカの物語。彼らの行く手を阻むのは、リベラルなハリウッド・スターたちにマイケル・ムーア。そして真の黒幕は……金正日!
コメディとして非常に楽しめた。政治的な立場に関係なく、なんでも笑いの対象にしてしまう爆走ぶりがすばらしい。下品さのぶち込み方もよい。
ちなみに、金正日は絵に描いたような悪の将軍様として活躍する。金正日といえば韓国から映画監督を拉致して怪獣映画を撮るくらいの映画好きであり、ここまで映画の中で大活躍させてもらえたのだから本望だろう。
ところで、作中で開催される国際式典には日本の代表も出席しているのだが、これって天皇陛下かなあ?
■満州帝国崩壊 -ソビエト進軍1945-
1982年のソ連映画。1945年8月、満州に侵攻したソ連軍と日本軍の戦いを描く。……といってもプロパガンダ色は意外と希薄で、娯楽性が強い。
素人考えだと、昭和20年の日本軍なんてもはや戦争どころではないようにも感じられるのだが、作中ではけっこう健闘してソ連軍を苦しめていたりする。ソ連側の補給の痛いところを突いてみたり。自分たちは補給を軽視していたわりに、他人の補給には敏感なのだ。
ちょっとおかしかったのが、ソ連軍に捕らえられた日本兵。彼は日本語で「万歳日本! 万歳日本! 花は桜木(?)、人は武士!」などと叫んでいて、士官が通訳に「彼は何と言っている?」と尋ねると、通訳は「大日本帝国は不滅だ、と」……往年のアカデミー出版みたいな超訳である。
ほか、セミョーノフ軍の残党なんてのが出てくるのには少し驚いた。セミョーノフ軍って、ロシア革命の時の反革命側の部隊ではなかったか。ちなみに私は白系ロシアというとすぐに「聖アレキセイ寺院の惨劇」を思い浮かべる、引き出しの少ない人間である。
T34がバカみたいに出てくるのでその筋の人にはおすすめ。
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- ▼ 【DVD】『満州帝国崩壊 ~ソビエト進軍1945~』 まん感全席
▼ 2005/12/17(土) 忘年会その2
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▼ 2005/12/14(水) 忘年会その1
■ミステリ忘年会
翻訳者の方々が中心になって開催している忘年会。今年は書評家方面の出席者が異常に少なかった。大森望さんが「これは何かの陰謀で、我々は仲間はずれにされたのだ」という説を提唱していた。
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▼ 2005/12/12(月) ミステリマガジン
■新刊評
毎度のことながら遅れてしまってすみません>編集部
今回担当したのはこの4作。
- 『よい子はみんな天国へ』ジェシー・ハンター
- 『七月の暗殺者』ゴードン・スティーヴンス
- 『007/ハイタイム・トゥ・キル』レイモンド・ベンスン
- 『レイジング・アトランティス』トマス・グレニーアス
『よい子はみんな~』は、クリスマス・ストーリーとしてもおすすめの、ユーモアと危うさが同居するサスペンス。
IRAと英国政府のチェスゲームを描いた『七月の暗殺者』は、「駒」の内面もきっちり描かれていて、強く激しくおすすめ。
『007~』はお約束の踏襲が素敵。
扱いに困ってしまったのが『レイジング~』。南極の氷の下に超古代文明の遺跡がありましたよ、という『エイリアンvsプレデター』からエイリアンとプレデターを取り除いたような話だ。南極で超古代文明の遺跡を見つけましたよ、という話ならば、大風呂敷の達人クライヴ・カッスラーによる『アトランティスを発見せよ』という偉大な先達があるわけで、あまり何のヒネリもない話を書くのはどうかと思う。
南極といえば、超古代文明の遺跡やナチの残党が出てくるのはお約束である。したがってそういうものが出てきても、喜びはするけどあまり驚いたりはしない。
今までにいちばん驚いたのは、南極を舞台にした冒険小説に北朝鮮特殊部隊が出てきたときだ。よくぞこんな遠くまで。思わず目頭を熱くしてしまった。
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